ちょっとしたゲーム的な何か(第4回)

ちょっとしたゲーム的な何か(第4回)

アプリ開発のお話をいただくときに、機能の1つとして担当の方から「ちょっとしたゲーム的な何か」というものをオーダーされることがよくあります。せっかくアプリを作っても使ってもらえなければ意味がないので、利用を促すための施策としてそういったものが期待されるのは当然かもしれません。

一昔前だと「ゲーミフィケーション」といった言葉が流行ったりもしましたが、ランチェスターがこれまでいくつかの案件で取り組んできた課題でもあり、オムニチャネル系アプリではよく話題になるトピックです。しばらくこの「ちょっとしたゲーム的な何か」について書いてみようと思います。

というシリーズの第4回。今回のお題は「ゲーミフィケーション的な何か」についてです。タイトルでそう言っているだけに、いままでで一番ゲームっぽい感じの話になる予定です

ちなみにゲーミフィケーションについて詳しく語る予定は今回はありませんが、個人的には「何らかの目的を達成するために、ゲーム的な仕組みや演出を入れることで、その動機付けの強化を狙う」というのが、だいたいの定義かなと思っています。詳しく知りたい方は書籍がいっぱい出てますのでそちらをどうぞ。

  

 

御朱印帖的な何か

チェックイン的な何かの話でも触れましたが、チェックインに対してインセンティブを付与するだけではなく、どこにチェックインしたかを履歴として残すことで御朱印帖のように振り返ることができるようになります。

MUJI passportではスタンプ帳という形で実装されていて、店舗でチェックインするとスタンプがもらえる形式になっています(スタンプの種類は都道府県または国単位)。スターバックスのアプリにもチェックイン機能がありますが、こちらはチェックイン時に撮った写真などを一緒に履歴として振り返ることができるようになっています。いわゆるインスタ映えする写真をSNSシェアすることも含めて機能が考えられてるからでしょう(Instagramへの投稿は連携されてませんが)

この手の訪問記録を残す楽しみは例として名前を出している御朱印帖や、JR東日本で毎年行われていて人気のポケモンスタンプラリー、全国の郵便局を訪れた証拠として少額入金して記帳する旅行貯金というちょっと変わった趣味まで、古くから楽しまれている歴史と伝統のある遊びの1つです。ルールも簡単でわかりやすい利点があります。

チェックイン自体を実装できれば、そのついでにログを残して御朱印帖的な機能を作るのは難しくありません。合わせて実装するのであれば、比較的実現しやすいゲーミフィケーション要素となります。

チェックイン以外での施策として例えば飲食店のメニューを食べるたびにスタンプが貯まっていく仕組みを作り、全メニュー制覇を目指す遊びのようなものも考えられます。また、この御朱印帳的なものの見せ方として単に履歴を表示するだけではなく、ポケモンGOのポケモン図鑑のように穴埋め式の見せ方をしたり、地図上にピンをプロットしたり訪問した都道府県に色を塗ったりすると達成までの進捗が可視化され、よりゲーミフィケーションっぽくなってきます。

これらの施策は未訪問の店舗を訪問してもらったり、新しいメニューを試してもらったりする動機付けを作ることで機会増を狙うのが目的になってきます。もちろん、この機能を遊びとして楽しんでもらいアプリのアクティブ率が上がったり、ブランド認知度そのものが上がってくれればさらにありがたいという感じになるでしょう。

 

 

アチーブメント的な何か

18年春にリリースされた『セブンイレブンアプリ』には商品の購入回数や、店舗への来店回数に応じて様々な「バッジ」が貯まる機能があります。商品の購入に紐付いたバッジが多くありますが、御朱印帖的な要素に近い「お店巡り」を楽しまれてる方も多いようですね。

この手のものをアチーブメントと呼ぶことがあるのですが、そもそも「アチーブメントって何…?」という話になりますよね。はい。

直訳すると「業績」とか「達成」、ゲームの世界でよく見られる何かを達成したことを示す証のようなものです。バッジのほかにもトロフィーとか呼ばれたりします。ポケモンGOにも「メダル」という形で歩いた距離や捕まえたポケモンの数などに応じたアチーブメントが用意されています。

ゲームの場合はプレイの内容や回数などで目標(ミッション)を提示して、それを達成する流れをアチーブメントとして可視化し、それをランク付けして他のユーザーと比較したりしてゲームをやり込むモチベーションを高める仕組みになっています。ゲーム自体の遊び方の幅を広げるために、メインの目的とは違う目標設定をすることでより長く楽しめるようにするという側面もあります。

PlayStation1の頃からあるグランツーリスモという有名な車のゲームのシリーズにも、同じミッションをより高いレベルでクリアすることでトロフィーの色が変わる要素があります。ほかにも非常に多くのゲームに同じような機能があり、ここ最近のゲームのプラットフォームではシステム側でこの仕組みを用意するようになったくらいです。

アチーブメントはゲーミフィケーション要素を入れるときによく利用される手法の1つです。すぐに挑戦できるミッションを提示し達成したらそれを称え、さらに次のミッションを提示していく流れを作ることは、そもそも人のモチベーションを維持する方法としても適しているので、アプリ利用の動機付けとしても取り入れやすいと言えるかもしれません。

 

レベル的な何か

クレジットカードのランクアップや楽天市場の会員ランクなど、ユーザーが何らかの到達点に達したときにレベルアップさせる仕組みは昔からよく見られます。あまりゲームっぽい要素という認識は持たれていないかもしれませんが、これもゲーミフィケーション的なものの1種と言ってよいと思います。

例として挙げた楽天市場の場合、過去6ヶ月間のポイントの獲得回数とポイント数で翌月の会員ランクが決定する仕組みになっています。またランクをキープするためにランクアップ時と同等の条件を毎月キープする必要があります。

会員ランクのルールを見ると、必要なポイント数の条件については上位ランクになると様々なポイント特典が増えることや、もともと楽天市場でポイントアップキャンペーン等が頻繁に実施されていることを考えると、それほど達成が難しいものではないことがわかります。ハードルが高いのはポイントの獲得回数で、結局のところは楽天市場で高頻度で買い物をしているかどうかでランクが決まるといっていいルールです。

ただ、シルバーランクに至ってはかなり低めのハードル設定(ポイント獲得回数2回)になっていて、1回でも買い物をすると「あと1回でランクアップ!」という通知が出る状況になります。これによってランクアップの仕組みを認知してもらうのと同時に、ランクアップのために買い物を促す狙いも達成しているわけです。結果、ランクアップの達成感や上位ランクに上がった名誉欲もすぐに得られます。楽天市場とのブランドエンゲージメントも高まることになるはずです。

またランク維持についても上手くできた仕組みになっていて、一度手に入れた地位というか高いランクを維持したいと考える心理は誰にでもありますし、いままでの努力(=実際はモノを買っているだけ) が無駄になると考えてしまうサンクコスト効果は、過去6ヶ月という期間設定によってより強く感じてしまうんじゃないかなあという感じがします。6ヶ月もの長期にわたる努力が無駄になる(=実際はモノを買っているだけ) という脅迫感はなかなかしびれます。これによって、月末の駆け込み需要が喚起され、楽天市場の本来の目的である商品の購入を促進することにつながっているわけです。

これらのランクを設定するルールは、通常時の購買頻度や来店頻度、購買単価を見ながら、それを少し上乗せさせていけるような形が基本になってくると思います。いわゆるお得意さんや一見さんなど想定されるユーザー像の区切りをデータから見極めて、購買行動にあわせてランク設定やランクアップのルールを考えていく流れです。

 

ランキング的な何か

数年前、いきなりステーキの「肉マイレージ」という仕組みが話題になりました。これはいきなりステーキで食べた肉の総重量を「肉マイル」として記録し、そのランキングを毎月ネット上や店舗に掲出するという企画です。

肉マイレージにはランクアップの仕組みもあって、ランクが上がるとドリンク無料など様々な特典が得られ、それだけでもリピート増を促す仕掛けになっているのですが、このランキングはそれ以上にお客さん同士の競争という形で盛り上がり、メディア等にも取り上げられるなどして結果的に客数増・リピート増・客単価増と言うことなしの結果につながったと思われます。

こう書くと至れり尽くせりの企画で、みんなやればいいじゃないかという話になりそうですが、ランキングは参加者が十分に集まった状態が作れないとサービスが過疎ってる状況を自ら晒してしまうという、諸刃の剣のような側面も持っています。ランキングを集計する期間や対象単位(店舗単位、都道府県単位など) の設定も重要で、アクティブのユーザ数を把握して実施時期を検討しながら考えていく必要があります。いきなりステーキのように初期から実施して成功するのは、肉マイレージのようにインパクトのある企画を立てられたという点も含めて希有な例といえるかもしれません。

ちなみに僕もこの施策にまんまとハマって、いまではプラチナカード会員(20kg以上食べた人) です。ゲフ。

 

進捗の演出とバランス調整

これらをゲーミフィケーション要素を取り入れる場合に重要なのが、達成までの道のりや他者と比較した現状をわかりやすく可視化することと、その状況をみて「達成できそうだ」「勝てそうだ」と感じて頑張ってもらうためのバランス調整です。ゲーム開発の世界では非常に重要視されていて書籍もいくつか出ていますが、本格的なゲームを作るわけではないのでまずは参考程度に。ただ、ユーザーの動機付けを強化するための演出・バランス調整の考え方は重要です。

 

例えばMUJI passportのスタンプ帳の機能は、穴埋め式の演出の「都道府県順」表示に切り替えることで、都道府県以外にも各国のスタンプ欄が表示されます。この欄は国内の47都道府県埋めるのも結構厳しいですが、海外については20か国以上枠が存在していてまるで達成できる感じがしません(もともとメインに据えられた機能ではないのでアプリ起動の動機付けとして考えてないと思いますが)。

もしこの機能のバランス調整をするとしたら、海外のスタンプ欄をアジア・ヨーロッパなど地域で細分化するか、新しい地域がスタンプで埋められた個数でトロフィーやレベルのような概念をつけて、途中の動機付けを別につけてあげる方法などが考えられます。

このように1つの要素だけで無く、御朱印帖+トロフィーなど複数のパターンを組み合わせ、バランス調査がしやすい構成を考えてみるのも効果的です。

 

インセンティブについて

ゲーミフィケーション要素を組み込むときに、インセンティブをどうするか? といった課題が挙がってくる場合があります。

結論から言うとゲーミフィケーション要素がきちんと考えられていれば、それ自体がモチベーションとして機能するはずなので、必ずしもポイント付与のようなインセンティブが必要になるわけではありません。

クーポンやポイントをばらまく施策は案としてよく出てきますが、そういうものがなくてもゲームを遊ぶように楽しんで使ってもらう仕組みがゲーミフィケーションなわけで、インセンティブを考えるとしたらむしろ達成した功績を「名誉」として称えるような演出の方が効果的です。

逆に実績や達成度をポイントのような形で現金換算可能な形で評価される構造を作ってしまうと、達成に要した時間で得られたポイントから時給換算してしまったりして、急に現実に引き戻されてアプリを利用する熱意が一気に冷めてしまうといった事態も起こり得ます。難しいところです。

 

次回は最終回、「ちょっとしたゲーム的な何か」を考えるときに課題になることや難しい点などをまとめてみたいと思います。

 

 

画像はいらすとやさん、ぱくたそさんのフリー素材を使わせていただきました。いらすとやさん、ホントに何でもあるな…。

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篠キチ
Planner 篠キチ shinokichi

約3年半にわたり君臨したランチェスター最年長の座を譲り、今はただの猫・鉄道・Perfume好きな不惑おじさん。好きなスタバオーダーはクワットロベンティノーホイップソイホワイトモカ。