ちょっとしたゲーム的な何か(第3回)

ちょっとしたゲーム的な何か(第3回)

アプリ開発のお話をいただくときに、機能の1つとして担当の方から「ちょっとしたゲーム的な何か」というものをオーダーされることがよくあります。せっかくアプリを作っても使ってもらえなければ意味がないので、利用を促すための施策としてそういったものが期待されるのは当然かもしれません。

一昔前だと「ゲーミフィケーション」といった言葉が流行ったりもしましたが、ランチェスターがこれまでいくつかの案件で取り組んできた課題でもあり、オムニチャネル系アプリではよく話題になるトピックです。しばらくこの「ちょっとしたゲーム的な何か」について書いてみようと思います。

というシリーズの第3回。前回チェックインについて書いた件の続きで、今回はそのチェックイン機能実現のための様々な手法の中から代表的な例を挙げて、それぞれのメリットデメリットを考えてみたいと思います。

 

GPS

MUJI passport等で採用されている方式です。スマホでは地図アプリなどを日常的に使うためGPSOFFにしている方は少ないので、利用の敷居が低いのがメリットです。ここでは「GPSって何?」って話には触れない方向で。

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デメリットは精度の低さです。GPS自体の精度の問題ではなく、屋内では衛星からの電波が受信できず正確に計測できないので、百貨店やショッピングモール内、地下に店舗があることが多い業種では精度の高いチェックは難しくなります。あと、GPSによる計測は建物等の反射が原因で誤差が大きくなったりもするので、都市部では意外と精度が出ない場合があります。

またGPSを利用したチェック方法では建物の何階にいるとかもわからないので、店舗が10Fにあったとしても実際には10Fに上がらずにチェックインできてしまいます。このため厳密に来店したかどうかを計測したい場合にはあまり向かない方式になります。

MUJI passportはもともとチェックイン可能とする距離を半径600mとかなり広範囲に取っていて、厳密に来店したかどうかにはこだわらない設計になっているので、ここで挙げたようなデメリットは問題にならなかったのだと考えられます。

基本的にアプリを起動してもらって位置情報を確認する流れになるので、その動機付けや日々の生活の中での気づき(チェックインできることを思い出してもらうこと)について、あらかじめよく検討しておく必要があります。

 

ジオフェンス

これもGPSを利用していますが、あらかじめ店舗周辺に仮想の検知範囲(ジオフェンス)を設定し、ここに端末が入った(または出た) ことを検知する方法です。アプリを起動していなくても端末がジオフェンスに入ったときにPush通知を受け取るといったことができます。このあたりはメリットとして大きいですね。

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実装方法にもよると思いますが、デメリットとしてタイムラグの問題があります。ジオフェンス内に入ったユーザーにPush通知を送って来店を促したい、というご要望はよくありますが、実際のところ端末がジオフェンスのエリア内に入って即時にPush通知が送られることはあまりなく、かなり遅れて届いてしまい時機を逸してしまうことがあります。

逆に飲食店などは食事中の時間は滞在してくれることがわかっているので、多少のタイムラグは許容できます。こういった業種には向いた方式といえるかもしれません。ただ、いずれにしてもPush通知で手遅れの情報を届けてしまうのは逆効果なので、このあたりのことを踏まえた情報の出し方を考えておく必要があります。

また、アプリが位置情報をもとにPush通知を送ることがあるということをきちんと説明できていないと、起動していないアプリが急に自分がいる場所をもとにした情報をPush通知してきたことで不快感を覚え、Push通知の解除やアプリの削除に繋がってしまうリスクもあります。

ジオフェンスによる通知が話題に挙がるときはアプリ運営側の都合だけで考えた内容になってしまっていることが多い印象を個人的に持っています。お店の近くに来た人を呼び込みたい! という気持ちはわかりますが、お客様との良好な関係を保ったコミュニケーション設計がイメージできているか、受け取る側の立場になって考えていきたいところです。

 

ビーコン

主にBluetoothの信号を発する発信器(ビーコン)を用い、端末がこの電波を受信することでビーコンに接近したことを検知する方式です。これもジオフェンス同様にアプリが起動していなくても検知でき、端末でPush通知を受け取るといったことができます。

メリットはビーコンの近くに来た端末と通信するので、レジ前などにビーコンを設置すればGPS等の方式とは違い明確に来店を捕捉できる点です。自販機とアプリが通信してポイントが貯まったりする「Coke ON」やKIRINの「Tappiness」もBluetoothを利用しています。

デメリットは発信器を利用するため電源の問題があること。ビーコンの消費電力は微々たるものですが、いつの間にかビーコンの電池が切れていることに気づかなかったりするトラブルが起こりえます。また、BluetoothWi-Fi等の電波と干渉したり、人体が遮蔽物となってうまく届かなくなったりすることがあるので、思ったように端末でビーコンからの電波が受信できないということもあります。そのため、設置場所を工夫しないと来店をもれなく検知するといった目的が果たせない可能性が出てきます。

最近はBluetoothのヘッドホンが普及してきたので改善されてきていますが、端末の設定でBluetooth自体がOFFにされているとどうしようもなく、GPSに比べるとその比率がまだ高いと考えられるところも難点として挙げられます。

 

ちなみにビーコンには楽天チェックアプリ等で使われている人の耳に聞こえない高周波の音を利用した音波ビーコンというものもあります。山手線の全車両にも音波ビーコンは搭載されていて、これを利用したアプリコンテストなども行われていましたね。

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ただこれはOSレベルで何かサポートされているわけではないので、アプリを起動してくれないと検知できない点が難点で、アプリからマイクを利用することもOKしてもらわないと検知ができません。マイクに利用許可を出すのは心理的なハードル高めだと思いますので、仕組みに関して丁寧な説明が必要になりそうです。

また、実際に利用してみた際にかなり発信器に近づかないと捕捉してくれなかった印象を個人的には持っていて、レジ前とかにビーコンがあるとちょっと迷惑になりそうな感じがしたのが気がかりでした。

 

QRコード等を読み込む

店舗に設置したQRコードをアプリで読み込んで、チェックインとする方式です。店舗毎にQRコードを変えておくことで店舗を特定する方法が考えられます。

カメラやQRコードリーダーを起動しなくてはいけないデメリットはありますが、QRコードの掲示とあわせてアプリの告知やインセンティブを伝えることができるので、POP等を設置しやすい飲食店等では実施しやすい施策といえそうです。

日本ではガラケー時代にQRコード全盛期があったもののスマホ普及後はいったん下火になった印象でしたが、LINEの友達登録に使われたり、海外で普及したアプリ決済の流れの影響もあるのか、最近はiOSのカメラが標準でQRコードの読み込みに対応するなど、また一般的になってきています。そのおかげでQRコード自体の認知度が高く、とりあえずカメラで読み込んでみようと考える人が多いのもメリットと言えるでしょう。

ただしQRコードはスマホのカメラ等でコピーが容易なので、読み込み時にGPSによる位置情報を併用して、ホントに店舗付近にいるかチェックかけるなどの対策は必要になってきます。

また、チェックインに限った話ではありませんがQRコードを利用する場合に課題になるのが、コードを読んだ後にアプリを起動させて目的を達成させるまでのディープリンクの挙動などをうまく作り込めるかどうかという点です。QRコードにアプリのURLスキームを指定してディープリンクで直接目的の画面を開くことも技術的には可能ですが、この方法だとアプリを入れてないユーザーがコードを読み込んだ場合に何も起きなくなり、ユーザーが途方に暮れるという状況が発生します。

これを回避するにはQRコードからディープリンクで直接アプリを起動させるのではなく、アプリが入っていない場合にストアに誘導したり専用のWebページに遷移させるなどの処理をあらかじめ考えておかなければいけません。また例に挙げたように店舗毎にQRコードを分けてチェックイン判定をするなら、店舗を判別するパラメータ等の値をディープリンクで起動するときに適切に受け取って処理する必要があります。場合によってはOSも判別して、QRコードからディープリンクでアプリを起動する際の処理を分けることも必要かもしれません。こういったきめ細かい作り込みに対応することを考えると、サーバ側での適切な振り分け処理を独自に実装するのが個人的には良いと思っています(ランチェスターでは対応実績あります)。

 

店頭端末と何かする

チェックインのことを書いた記事でも触れましたが、ヤマダ電機の来店ポイントやドラッグストア等にあるクーポン発券機など、店頭に設置した端末にアプリのバーコード等を読み込ませることで実現する方式です。

これらはスマホが普及する前からある機械ですが、お客様がいつ・どのお店で店頭端末とやり取りをしたかが確実にわかるので、チェックイン機能として利用することも可能です。

ただ店頭端末の導入コストがかかることは間違いなく難点といえるでしょう。また、店頭端末の仕組み次第ですが、そもそもアプリでのチェックインのために作られているわけではないので、アプリにチェックイン結果が届くのが翌日とか翌々日になる場合も出てくると思います(システム側の新規開発もおそらく必要になるでしょう)。

このあたり、店頭端末で何らかの特典などがその場で発行されてる場合が多いと思いますので、チェックイン的な要素をオマケ的に考えて後日の処理でも問題ない企画にしたり、あくまでデータ収集の手段と割り切ってチェックイン的な演出はつけないという判断もありかなと思います。

 

偽装工作への対処

QRコードのところでは若干触れましたが、チェックインの検知方法を検討したり、実際に開発する際に必ず考慮する必要があるのは偽装工作への対処についてです。

QRコードを写真に撮っていつでも使えるようにするというのは誰でも思いつきそうなことですが、実はごまかしようがないように思えるGPSを用いた位置情報計測は様々な方法で偽装が可能です。そのため高いインセンティブをチェックインで付与する場合は特に、こういった偽装工作によって不正行為が行われることは織り込んで設計しておく必要があります。

実際にはチェックインするときにリアルタイムで偽装を見破ると言うよりは、チェックインのログをきちんと残し、不自然なチェックイン行動(時間的に移動不可能な距離のチェックイン記録がある、など)を調べて後から不正対処を行うやり方になると思いますが、こういったこと対処を行う場合があることをあらかじめ利用規約等に入れておくことも忘れないようにしないといけません。

 

次回は「ゲーミフィケーション的な何か」と題して、よくゲーミフィケーションと言われることについて書こうと思います。

 

画像はいらすとやさん、ぱくたそさんのフリー素材を使わせていただきました。

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篠キチ
Planner 篠キチ shinokichi

約3年半にわたり君臨したランチェスター最年長の座を譲り、今はただの猫・鉄道・Perfume好きな不惑おじさん。好きなスタバオーダーはクワットロベンティノーホイップソイホワイトモカ。