ちょっとしたゲーム的な何か(第5回)
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ちょっとしたゲーム的な何か(第5回)

アプリ開発のお話をいただくときに、機能の1つとして担当の方から「ちょっとしたゲーム的な何か」というものをオーダーされることがよくあります。

一昔前だと「ゲーミフィケーション」といった言葉が流行ったりもしましたが、ランチェスターがこれまでいくつかの案件で取り組んできた課題でもあり、オムニチャネル系アプリではよく話題になるトピックです。しばらくこの「ちょっとしたゲーム的な何か」について書いてみようと思います。

というシリーズの第5回。今回で最終回です。「ちょっとしたゲーム的な何か」について考えるときに、よく起こる話を思い出しながら書き綴ります。

 

ゲームが目的化するパターン

「ちょっとしたゲーム的な何か」が話題に上がるとき比較的よくあるのが、ゲームのようにそれだけで遊べるものを組み込んでそれを目的にアプリを使ってもらおうとしてしまうパターンです。カンタンに言うとアプリと何の関連もないオセロとか数独を入れてくださいという話です。「そんなバカな」と思うかもしれませんがこういうケースは意外と多いです。

しかし、仮にもしそのゲームが面白くてそれが目的でアプリを頻繁に起動してもらえて、インストールしてくれる人もどんどん増えるとしたら、それはもうゲームアプリとしてリリースしてゲームだけで収益をあげるとか考えた方がいいわけです。そして、もしゲームがなかったらアプリを起動してもらえないんじゃないか? とお客様が思われているんだとしたら、そもそものアプリの目的や要件を根本的に見直す必要があるわけです。

ただ、このパターンは担当の方がまだアプリのことをよくわかってなかったり、アプリで何をすべきかとか何を目的にアプリをやるのかといったことが整理できてなくて、とりあえず自分がわかるアプリの話として「ゲーム」と言っている場合があります。また「アプリの利用率」とか「ダウンロード数」がKPIだったりするとき、それをゲームを入れることでクリアしようと考えてしまうパターンもあります。これはアプリの機能だけを考えてしまい、集客や運用のイメージがついていないということが原因だったりもします。

ここで大切なのはそもそもお客様側にどんな課題があってアプリを作る話が出てきたのか、という根本的なところが議論から抜け落ちているということなので、安直に「ゲーム的な何か」について議論してしまうのではなく、そもそもの課題の話に立ち返ってもう一度整理するという作業が必要ということです。

単にゲームをやめましょう、外しましょうという話でもない。まず一番大事なことがなんなのか考え直してみて、その上でゲーム的な何かのことも含めて考え直すという取組みが必要になってきます。

 

「ミニゲーム」という危険なワード

これは「ちょっとしたゲーム的な何か」としてゲーム的要素を入れようとしている場合でも、動機付けとしてゲーミフィケーション要素を入れようとしている場合でもどちらでも起こる話ですが、「ゲーム的な何か」の例としてお客様がどんなものを想定しているか意識合わせをまずしてみる必要があります。特に「ミニゲーム」という単語が出てきた場合は重要です。

「ミニ」ですからおそらく開発側は「おみくじ」や「スロットマシーン」みたいなちょっとしたものを考えると思いますが、お客様側はツムツムとかパズドラとかポケモンGOみたいなものを例に挙げて、「これの簡単なやつをちゃちゃっと作ってよ」…みたいに思われているかもしれません。担当の方がゲームを普段やっているとは限らないので、ゲームと言ってみたものの具体的なイメージは何も無い場合もあります。このあたりの認識が噛み合ってるか、ちゃんと話をしておくことは大切です。

※ イメージです

 

僕の経験上、ゲームを作る手間とか開発コストのイメージは普通の人にはすごく想像しにくいものなんじゃないかと思っています。さらにゲームを「ミニ」にしたからといってゲームのルールやロジックを考えたりする作業はあまりミニじゃないものと変わらなかったりするんですが、そのへんが変わらないということも理解されにくい点だと思います。

こういったコスト感・ボリューム感の意識合わせをきちんとせずにゲームやゲーミフィケーションのことを話し合うのは、ちょっと危険かもしれません。

 

鬼門となるPOS・基幹システムとの連携

実店舗を持っている業種のアプリでゲーミフィケーション要素を考えるとき、実際の購買をからめた企画はよく出ます。このときPOSシステムやその会社の基幹システムが持っている情報と連携する必要が出てきますが、ここが多くの場合で最も高い実現のハードルになります。

 

前回例に挙げた『セブンイレブンアプリ』を実際に使ってみるとわかりますが、バッジの条件となっている商品を購入しても結果がわかるまでにある程度時間がかかります。もちろんリアルタイムにその場でわかったほうが盛り上がるわけですが、これにはPOSや基幹システム側の事情が大きく絡んでいることは容易に想像できます。

これらのシステムにはWeb経由でアクセスできるAPIのような仕組みが用意されていなかったりすることが多く、たいていは日次のバッチ処理+ファイル転送という処理形態が取られています。常時接続のインターネット環境が当たり前に使えるようになったのはここ10年前後の話ですから、店舗にある機器やシステムがWeb経由のリアルタイム処理に対応するなんて想定されてなくて当然といえます。

24時間営業が普通のコンビニではPOSは基本的に止めることができないでしょうし、基幹システムも20,000店舗のチェーンを支えているわけですから途方もない規模の設備です。これらのシステム変更にかかる期間とコストはWebやアプリの世界とはケタ違いの世界になってきます。対応するPOSレジの入れ替えが必要になる可能性もあるわけで、これをアプリの1機能のために実施するかどうか検討しなければいけません。とんでもなく高いハードルです。

セブンイレブンアプリはバッジ結果の反映にタイムラグがあるのでバッチ処理で連携していると思われますが、それでも相当なコストがかかっているはずです。たいていはこのコストの問題で企画を見送るパターンになるので、セブンイレブンの規模でこれを実現しているのは極めて異例なことだと感じます。

いずれにしても、この問題は多かれ少なかれ購買を絡めたゲーミフィケーションを実施しようと思えば必ず発生する課題で、何かよい解決策を立てる必要があると個人的には考えています。機会あればこれについてもう少し掘り下げて書いてみたいと思います。

 

 

「自分はやらない。だからいらない」 というパターン

世の中には「ゲーム」というものがものすごく嫌いな方がいらっしゃるので、ゲーミフィケーション要素の検討をしているときにクライアント側にものすごい反対意見が出る場合があります。僕の経験では「ゲーム」なんぞけしからんというオーナー会長の一声で、アプリ内の「ゲーム」という単語をリリース直前に全部置き換えたことがあります。まあプロジェクト自体が潰れなくてよかったですが。

この場合「自分はゲームなんかしないし、世の中の人はみんなそうだ。だからこんなものは不要だ。」という流れになるんですが、ゲーミフィケーション自体は目的では無く動機付けの強化策なので、必ずしも全員がやらなくてはいけないものにはなっていません(もしそうなっていたら企画を考え直す必要あると思います)。「ゲーム」という言葉だけが一人歩きしがちですが、そもそも最初に書いたようにゲームが目的化していたらその時点でNGですし、ゲームのように熱中できる「仕組み」を取り込んでいるのだということを丁寧に説明して理解してもらう必要があります。

ただ一番いいのは、食わず嫌いになっているであろう今どきの「ゲーム」をやってみてもらい、少しでも理解してもらうことかなと思います。コアユーザーは40代のおっさん(=篠キチ)という噂のポケモンGOもありますし、みんなでゲームをやってみるという機会を作るのも意外と効果あるかもしれません。もしかしたら単にスマホの操作に不安があったりして、ゲームをやるきっかけがなかっただけの人かもしれないので。

 

 

無限に遊び続けられる必要はあるのか

御朱印帖やアチーブメントの要素を取り入れた企画を立てると、「全店舗まわりきったらどうなるのか?」とか「全部のトロフィー(バッジ)を手に入れたらどうなるのか?」といった質問が出てくることがあります。ゲーミフィケーション要素への期待が大きく、これで遊び続けられるようにしなくてはこのアプリの意味がないと考えられてしまう感じです。「ゲーム」に反対されるのとは逆のパターンですね。

ただ、何度も書いちゃってますがそもそもゲーミフィケーション要素は元々あるアプリの目的を達してもらうため、その動機付けの強化のための要素です。なので繰り返しゲーミフィケーション要素で楽しんでいるうちに、本来のアプリ利用目的も習慣化され、最終的にはゲーミフィケーション要素がなくなっても生活の一部としてアプリを利用してもらえるようになっていることが理想です。

もちろん遊び続けられるように作り込んでいくこともダメではありませんが、それを楽しめるところまでやりこめるユーザーの比率はかなり少なくなるでしょうし、投資効果は大幅に下がっていくはずです。また、ゲーム的要素はアプリへのめり込んでもらう強力な動機付けになりますが、その反動としていつかは「飽きる」ということも認識しておく必要があります。

そのためゲーミフィケーション要素で楽しんでもらっている間にちゃんと本来のアプリ利用目的が達成され、利用が習慣化されているかを調べて、そうなっていくような改善・調整を考えていく方がよいのではないかと思います。

 

 

というわけで5回にわたって続いた「ちょっとしたゲーム的な何か」 今回でおしまいです。予定通り週刊ペースでリリースできてよかった。やれやれ

 

画像はいらすとやさん、ぱくたそさんのフリー素材を使わせていただきました。

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篠キチ
Planner 篠キチ shinokichi

約3年半にわたり君臨したランチェスター最年長の座を譲り、今はただの猫・鉄道・Perfume好きな不惑おじさん。好きなスタバオーダーはクワットロベンティノーホイップソイホワイトモカ。